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MAHALO(ハワイ滞在記:1)

   

武田文和:JH5PHC

 9月20日から1週間、夏休みにハワイへ行ってきました。その時のドタバタ道中記を思うままに、何回かに分けて綴らせていただきます。

 第1回の今月は、ハワイへ渡航するに至ったきっかけなどをお話します。なお、題字「MAHALO」とは、ハワイ語で「ありがとう」という意味です。海外旅行をされたときに、飛行機内でいろいろな案内の後に、「THANK YOU」と必ず付け加えられますが、ハワイでは、このアナウンスが付け加えられます。

 さて、無線好きな皆さんは、「10m」「2m」と書けば、即時に、「28Mhz」「144Mhz」と答える方が多いのではないでしょうか? それは、皆さんが“どっぷり”と無線関連に浸かっている証拠です。すばらしい!?

 なかには、「これだから困るんだよなぁ、無線をやってる人は?」とおっしゃる方もいらっしゃるでしょう。ご多分に漏れず、私も前者の部類に入る者です。

 確かにこの呼び方は、電磁波の波長のことを言っているのですが、単位「m」「メーター」ではなく「ミクロン(μm)」、赤外領域の波を表しています。

 この赤外線を感知するカメラ(CCD)を利用して、夜空の星を観測している望遠鏡が、「すばる赤外線望遠鏡(正式名称かどうかはわからない:以下、“すばる”と呼ぶ)」です。ハワイ島の標高4200メートルの「マウナ・ケア」山頂で、2000年の完成を目指して建設が進められています。

 山の名称「マウナ・ケア」とは、ハワイ語で「マウナ」=「山」、「ケア」=「白い」の意味で、「白い山」と訳されます。ご存知とは思いますが、「モン・ブラン」もフランス語で同じ意味を持っています。

 望遠鏡の名称“すばる”は、プレアデス星団の「すばる」という名称から、また、「ロマンあふれる宇宙の神秘を探求する者たちが集う」の意を込めて名づけられたそうです。

 この「マウナ・ケア」山頂には、環境保護団体との申し合わせにより望遠鏡設備は13機に数が制限されています。既に、13の望遠鏡があったため、他国の望遠鏡を山頂から標高2800メートルの場所に下ろし、新たな13番目の望遠鏡として、1991年から建設を開始、現在に至っています。運営は、文部省国立天文台によって行われています。建設中といっても、一部分は稼動しており、世界各国の注目を受ける観測結果を挙げています。こんな施設があったの知ってました?

 ハワイ島に建設されている理由は、気候が平穏で、観測に影響を及ぼす「大気の揺らぎ」が少ないことにあります。電磁波を扱っている方はもちろんお分かりだと思いますが、大気に含まれる水分(たとえば雨粒)は、波の共振現象により、吸収される波もあれば、反射される波もあります。すると、フェージィング作用を受けることになります。光も電磁波ですから、もちろん同じことがいえます。そうして選定された場所は、南米のチリなど各所にあります。そのひとつが、「マウナ・ケア」です。

 天文関連の月刊誌「スカイ・ウォッチャー」で、先の「獅子座流星群」の特集記事を読んでいたときに、たまたま、この“すばる”のことが書かれていました。小さな見出しでしたが、日本の天文学に携わる方々からは、長年の「夢」がかなうということで、大きな期待が寄せられていると書かれていました。

 放送関連の月刊誌「放送技術」では、NHKがこの“すばる”の「ファースト・ライト(火入れ式)」を中継するために、高感度カメラをメーカーと共同開発。無事に生中継を終えることができたとの報告が掲載されていました。

 もっと、身近な出来事で言えば、9月中旬、皇室の「紀宮さま(サーヤ)」が訪問した望遠鏡として報道されました。当地の地方紙:「愛媛新聞」では、「星の一生の解明に手がかり」という見出しで掲載されていましたのでご覧になった方も多いと思います。

 “すばる”の何がすごいのかというと、かすかな宇宙からの光を集光させる直径8.3メートルの主鏡(単一反射鏡)が世界最大であるということです。直径8.3メートルの主鏡といえば、それは巨大なものです。厚さは20センチメートルしかなく、その鏡面を磨くために約4年かかっています。加工と研磨は合衆国のピッツバーグで行われ、1998年9月に終了し、ハワイに設置されました。重量はというと22.8トンだそうです。

 また、この望遠鏡に必要とされる主鏡の材質であるガラスは、熱膨張に強くなくてはならず、かつ、天体画像を鮮明に映し出すため、研磨結果である表面精度(表面の凹凸)が0.00012ミリメートルでなくてはいけません。資料によると、かりに、ハワイ島の大きさに拡大したとき、鏡の表面の凹凸は平均0.12ミリメートルという驚くべき精度です。その記事を読んでから、一度この望遠鏡の勇姿を見ないわけにはいけないと考え始めました。

 その機会はすぐに訪れました。いや、無理やり作ったといってもよいかもしれません。今年3月に結婚した私は、仕事がいち段落した6月上旬に、遅れ馳せながら「新婚旅行」の名目でヨーロッパへ行きました。ツアーで参加したのですが、海外旅行のおもしろさの味を知った私共夫婦は、今度はどこかへ行こうかと次の旅行を考える毎日でした。そして、今行っておかないと、次に海外旅行ができる時は無いとの結論に達しました。

 お金が無いのは百も承知。妻の友人夫婦が前出の“すばる”のプロジェクトに参加しており、同望遠鏡をひと目見たい一心で、強引に出発1ヶ月半前に会社に有給休暇を申し出ました。妻に聞くと、奥さんとは電子メールでは連絡を取り合っているが、子供さんが生まれたので帰国が容易でないとのこと。お互い再会したいと望んでいたこともあり、話はトントン拍子で進みました。

 結婚してまもなく新婚旅行に行ってしまった私たち夫婦には、金銭的な余裕はありません。旅費はとにかく切り詰める。そのため、お世話になるであろう研究者夫婦に無理を言って、現地のツアー会社をあたってもらい、格安でチケットを購入してもらいました。また、ハワイ島内のツアー(キラウエア火山散策ツアー)に始まり、最後の宿泊地となるホノルル(オアフ島)のホテルも現地人料金で予約してもらいました。旅費関係の贅肉は無し。あとは、お土産をスーパーで買って帰るだけとしました(お土産を受け取った方、申し訳ありません…)。

 8月下旬には、会社からも早々と OKサイン あり。あとは、密に電子メールと国際電話でやり取りをして、チケットの手配を終え、チケットが手元に届いたのが出発の1週間前。内容を確認して、夫婦ともども気分は「武田夫婦 イン ハワイ」。会社の仕事は手につかず、ひたすら日数が減って行くのを待っていました。だけど、こういう時に、えてして「落とし穴」がありがちです。なんと恥ずかしいことに、出発の当日、それも「パスポート」をもう一度持ったかどうか確認するために懐から出して大変。失効しているほうの「古いパスポート」を手にしていたのです。いや〜!? これには参りました。もし、確認していなければ、出発地:松山空港で大慌て、飛行機に搭乗できなくなるところでした。

「いやな予感が…」

当日以降は、滞在記:2につづく

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